TASCAM DR-05XとDR-07MK2の音質比較

DR-05とDR-07の写真

使っている方も多いであろう、TASCAMのDR-05&DR-07。しかし、公式ウェブサイトを見ても、いまいち違いがわからないという方も多いのではないでしょうか? 今回は、自然音を録音するにあたって、両機種の注意すべきポイントを解説します。

まず、両機種はマイクの種類が異なります。DR-05は、無指向性マイクを並べたABステレオ方式です。DR-07は、(ほぼ)同軸上で、単一指向性マイクを90°で配置したXYステレオ方式となります。ただ、DR-07の場合、マイクを外側にも開くことができ、この場合マイクとマイクの幅が生じますので、TASCAMはこれを『A-B方式』と呼んでいます(SONYは、『ワイドステレオポジション』などと呼んでいるようです)。

個人的には、単一指向性マイクに角度を付け、幅を持たせたステレオマイキングは、「ORTF」「NOS」などをイメージしてしまうのですが、何だか頭が混乱するので、便宜的に、DR-07は、「XYステレオ・ベースの機種」と理解することにします。

さて、両機種の比較です。

録音場所は、都市公園の水の流れがあるポイント。近くには大きな木がいっぱいあり、セミの大合唱でした。7〜8mほどの距離から、水源をねらってマイクを立てます。DR-07は、マイク幅をワイドにしない『X-Y方式』でのセッティングです。いずれも純正ジャマーを装着しています。

ローカットなどはオフのまま。トリミングと音量調整以外は何もしていません。DR-05とDR-07では録音レベルにけっこう差があるようで、同じ数値設定でも、DR-07はだいぶ音量が小さく感じられました。そのため、DR-07を、約7dbほど、持ち上げています。

まずは「DR-05X」。水の流れも、セミの鳴き声も、その場の音風景をまんべんなく拾っています。水の流れを録った、と言わなければ、スルーしてしまいそうなくらい、水音がナチュラルに録れています。セミも数種類いるようですが、四方八方から聞こえている音を、360°収音しているイメージです。その場にいた音風景が、そのまま再現されている、といったらよいでしょうか。

そして「DR-07MK2」。水の流れに向けたので、水音の粒立ちがよりクリアに聞こえます。セミの鳴き声も、マイクを向けた方向にいるものは、きちんと収音できています。蝉しぐれに包まれながら、お目当ての「水の流れを録った」というイメージです。

また、最後のほうに、ハシブトガラスが鳴いているのですが、これの聞こえ方が両機種の違いをわかりやすく表しています。DR-05は、比較的はっきりと録れているのに対して、DR-07は、カラスが軸外にあったため、少しぼやけて、音も小さく録れています。要するに、DR-07は、マイクを向けた方向(=軸内)はクリアに録れますが、それ以外の方向(=軸外)は焦点から外れてくるのです。

さて、自然音を録音するのに、DR-05とDR-07、どちらを選べばよいのでしょうか。少し期待外れな回答になるかもしれませんが、これは録りたいソースによって異なります。デザインの好みで選ぶということもあるでしょう。ひとつ言えるのは、DR-05の方が、さまざまなシーンに対応できるので、とくに初心者にはおすすめ、ということでしょうか。